新石器時代から6500年以上の歴史を持つ、世界最古の製塩地のひとつ「アニャナ塩谷」。

約2億年前、すべての大陸がまとまり、ひとつのパンゲアと呼ばれる超大陸を形成していた時代、この地は大海原の下に沈んでいました。

やがて、海水の蒸発と地殻変動により、岩塩の層が形成されます。

そこに流れ込む雨水に溶け出す形で、閉じ込められていた2億年前の太古の海からの贈り物が、様々なミネラル分を含みながら、再びこの地に湧き出ているのです。

塩の結晶化は、広大な塩田で太陽と風という自然に頼る伝統的な方法が用いられます。

その間の攪拌・収集等、必要な作業は人の手で行われます。

塩田の中層から底の部分で育った小さな立方体の結晶「Mineral de Manantial（泉の塩）」は、マグネシウムやカリウムなどのミネラルを多く含むため、まろやかな塩味と、うまみや甘味、そして若干の苦味など複雑な味わいを伴い、素材の味を引き立たせます。

2億年前から地球が育んだ深い味わいは、美食の都・バスク地方はもとより、世界中の星付きレストランでもてはやされています。

出典
Añanaのグルメソルト (vallesalado.com)
https://cavedeterre-online.com/

スペインとフランスにまたがるバスク地方・エスペレット村周辺地域で生産される、複雑で独特な香りをもつ唐辛子。

メソアメリカ原産の唐辛子がこの地にもたらされたのは、16世紀の大航海時代。

伝統的に捕鯨を行っていたバスク人が、遠海の知識と経験を買われ、航海に同行、帰国した際、新大陸の作物を故郷に持ち込んだとの説があります。

そして、早くも17世紀半ばには存在したとされる、最初の唐辛子の痕跡が見つかっています。

以降約5世紀にわたり、丁寧に種を選別し、土地に合った唐辛子の品種改良や製造ノウハウの蓄積を担ってきたのは、バスクの女性たちです。

乾燥させたエスペレット唐辛子を砕いたときの、トマトや胡椒、またはフルーツ、トースト、干し草等の複合的な香りは、間違いなくこの唐辛子のアイデンティティーに関わる唯一無二の特徴であり、紛れもなく彼女たちによる日々の積み重ねの賜です。

周囲を取り囲むピレネーの激しい起伏によって生み出される、豊富な雨量を伴う高温多湿の亜熱帯に近い気候は、良質な唐辛子の生育に貢献し、当時高価すぎた胡椒の代わりとして、調理や食材の保存のために重宝されてきました。

一般的なカイエンペッパー等に比べて辛みは弱く、その圧倒的な香りの良さで、バスク料理を特徴づける香辛料となっています。

そしてこの比類ない唐辛子は、2002年にEUのA.O.P.（原産地呼称）の厳しい基準をクリアし、認定を受けるに至りました。

出典
エスプレットペッパー – エスプレットペッパーPDO (pimentdespelette.com)
ピモン・デスペレット（PIMENT D’ESPELETTE AOC） | discovery basquediscovery basque